人間の根源的欲求を5段階の階層で理論化したマズローの欲求5段階説は自己実現理論ともいわれる。
マズローによると人間の欲求は
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 社会的欲求
- 承認欲求
- 自己実現欲求
の5つとのこと。
クライミングがなぜ楽しいかを考えたときにこの人間の根源的欲求の点から考えると理解しやすい。
1. 生理的欲求
生理的欲求には古典的なものとして3大欲求と言われる食欲、睡眠欲、性欲がある。また「生きるために働く」欲求なども含まれる。クライミング自体でこの生理的欲求が満たされることはなさそうだが、一方でクライミングをやる大前提としてこの生理的な欲求は満たされている必要があるだろう。おなかが減っているのに、眠いのに、あるいはムラムラしているのにクライミングをする人はいない。
2. 安全の欲求
安全の欲求は「危険を回避し安全に過ごす欲求」であり、一見、高いところに登るクライミングとは正反対のように見える。しかし、考え方を変えると安全の欲求を求めて人は登るともとらえられる。クライミングをしている最中は怖い、でも登りきった時には安全は確保される(ことが多い)。そういう点でクライミングは安全の欲求を満たす。
3. 社会的欲求
社会的欲求は所属や愛情に対する欲求とされる。クライミングはひとりではできない。クライマーとビレイヤーが必要であり必ず誰かと登る必要がある。ザイルパートナーに対しては愛情、、、とまではいかないまでも自分の命を預けるため信頼が必要である。逆に言うと信頼されている。この点でクライミングは社会的欲求も満たす。
4. 承認欲求
承認欲求は認められたいと思う欲求だ。クライミングでは、ある課題を完登すると仲間から褒められたり祝福される。その課題が簡単か難しいかにはかかわらずだ。これは絶妙に承認欲求を満たしてくれる。またクライミングをしていてフォールしたからと言って叱咤されている人は見たことはない。「どんまい」と励ましてくれることがほとんどだ。クライマーはみな自分に厳しく他人にやさしい気がする。お互いに承認欲求を満たしあっているように思う。
5.自己実現欲求
最後に自己実現欲求だが、これはわかりやすい。クレイマーは程度差はあるものの少しでも上達したいと思って日々登っている。わかりやすいのはグレードだ。一つでも上のグレードを目指しムーブを考え、保持力を鍛え、反復練習をする。そうして登れたあかつきには思い描いていた理想的な自分に一歩近づくだろう。クライマーはグレードや課題というわかりやすい指標をもつことで日々自己実現を果たしていく。
こんな風にクライミングは人間の根源的欲求を満たす要素を多く持つ。だからこそ多くの人はクライミングに惹かれるし一度始めたらどんどんはまっていくのだろう。
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