アルパインクライミングはなぜ怖い?

 フリークライミングとアルパインクライミングの両方をやるが,個人的な感覚としてはアルパインクライミングの方が怖い.アルパインにいくとフリークライミングは健全だなと思う.なぜアルパインクライミングは怖いのかを考える.

 一つ目の要素としては,岩自体の安定性だろう.フリークライミングの場合はスポーツ的な楽しみ方をすることもあって硬い岩を登ることが多い.一方,アルパインクライミングではアプローチも含めて,浮石や脆い岩が多い.クライミング中に持ったホールドが剥がれるなんてことはざらにある.そのような不安定なホールドでは普段しているような自在な動きは難しい.ムーブが制限されるとクライミング自体の難易度は上がったように感じるだろう.ルートの難易度自体はフリールートの方が高いのに,だ.

 二つ目の要素としては,支点の問題だ.岩の安定性もそうだが支点の安定性もアルパインクライミングでは不安が残る.フリールートではハンガーボルトなど強固な支点が設置されている場合が多いが,アルパインクライミングでは多くの場合ナチュラルプロテクションとなる.カムやナッツならばまだ信頼性も高いが,自然由来の支点だとフォールをしないことが前提になる.そもそもカムやナッツでもボルトに比べると心もとない.

 三つ目の要素としては,フリークライミングとアルパインクライミングの強度の問題だろう.フリークライミングでは落ちる前提で自分の限界に挑む,いうなれば100%の力を発揮して登る.自身でも経験しているが,100%の力を出しているときはそれほど怖さを感じない.一方でアルパインクライミングでは支点の関係もあり落ちるほど強度の高いクライミングはできない.なんなら一息つくレッジやテラスがあったりする.怖さを感じるのはこういうタイミングのように思う.

 さらにアルパインクライミングの場合,クライミング自体の恐怖感もそうだがアプローチや下山段階でも道が悪いことが多くこのあたりも気を遣う.クライミング以外にも恐怖を感じるところがある.

 ボルダリング,フリークライミング,アルパインクライミングなどいろんなクライミングのスタイルがあるが,どんなスタイルであれクライミングは楽しい.でも高いところに登ることは人間の根源的な怖さを刺激してくる.実際に落下してグランドフォールすることはほとんどないはずなのに,それを頭では理解しているはずなのに,この生物の本能に訴えてくる怖さとはいったい何なのか.

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