クライミングをしているときに腕や体幹、足に力を少なからず入れて登る。筋肉が盛り上がり、血管が浮き出る。本人はとても苦しいものであるが、上手な人の登りを見るとまるで力が入っていないようにスムーズに登っている。逆に下手な人の登りを見ると力が入りすぎているようにも見える。
クライミングは力だ!!というのは多少クライミングをしている人であれば皆が否定することであろう。もちろん力は必要であるが、より力のいらない動きを要される。力のいらない動きは(もちろん本人はきついのだが、)非常に効率化された動きであってみていて美しい。アダムオンドラなどはまるでダンスをしているかのようにすらすらと登っていく。
見ていて美しい登りというのは無駄がなく、効率的に力を使っていて、力学的にも合理性があるのだろう。最近、自分の登りでもとても苦しい課題だったのに動画で見るとそれほど苦しくなさそうなものもある。少しは力がついてきたのだろうか。一方で、不格好に腕を曲げて、腰が壁から離れて、苦しそうに登っている場面もある。
クライミングは力ではない。でも力が必要だ。ムーブというのはより効率的に合理的に省エネで登るためにあるのだろう。パワーが強くて、筋持久力が無限にあって、なんでも保持できるような人であればムーブはいらないのかもしれない。でもそんな人間はいない。持ちにくいホールド、遠いホールド、強い傾斜、ルートの長さなどがクライミングの難しさを決める要素だろうと思われるが、これらの問題に対して有限の自分のエネルギーをどれだけ効率よく使えるかを求めるスポーツなのだ。クライミングが強くなるには、このエネルギーの総量を高めると同時に、このエネルギーを効率よく使う方法を探す必要がある。
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